水谷公生の音魂日記

「僕の音楽人生 その5」

青春時代の失敗。GS時代の失敗。
あれから何年も過ぎているのに、忘れた頃に突然夢に現れ今でも僕を苦しめ続ける。
あぁこの容赦ない残酷さは、神が僕に与えた試練なのかぁ〜、、、、!

と、いうのは大嘘で、思い出すたびにいつもニヤニヤ、クスクスしてしまう。
それはどんな苦しさや困難を抱えているときでも。

OUTCASTはどんどん音思考(いわゆるアイドルばなれ)になっていき、
当然レコード売り上げは伸びず、ファン離れも起きていく。
やはり名前のとおり、OUTCASTは「追い出されたもの」なのか?

そんななかで、プロダクションから解散して違うグループを作りなさいと言う、
半ば強制的な指令が下った。
「なんだかんだ言ってもGSはやっぱりアイドル度が強くないと!」
僕らを取り巻く意見はほとんどがそっちに向いていたのだ。

それと時同じくしてSONYグループがCBS SONYというレコード会社を始めるので、
その1号アーティストのなかに入れるという有り難ーーーい話まで持ち上がった。
で、ホイホイと解散、それもアッケラカンと。
グループを作る時とか、活動を共にしている時はチームワークとか絆とか
僕らは強く結ばれているとか、皆が揃って口にする。
でも僕の知る限り、たいがいのグループの解散はいとも簡単に行われる。
ホイホイとアッケラカンに。悲しい真実なんだけど。

日劇でラブソングを仰向けに倒れながら歌った轟健二と、なんちゃってリーダーの僕、
そして新たに川上幸夫(スパイダースのバンドボーイ。可愛くてお茶目なドラム)、
土谷守(ルックス抜群、キーボード)、千原秀明(本名武部秀明。後に僕と長い間スタジオで
行動を共にすることになるのだが、残念な事に2002年に亡くなった。
彼は本当にモテた。ベース)の5人で新たなグループが出来た。
僕以外、ルックス抜群なアイドル度充分のバンドだ。
バンド名も決まった。「アダムス」そう! 人類の源だ。
のけものだった「OUTCAST」とは名前が違う。なんといっても人類の源だ。
ついていないワケは無い。
明るい未来。前途洋々。アイドル路線マッシグラ。

デビュー曲は「旧約聖書」。当時としては異例中の異例、オーケストラと大混声合唱団、
それにアダムスの5人。
総勢50人を超す、だいそれたレコーディング。
しかも同時録音。
オーケストラと大混声合唱団、それにアダムスの5人が一緒にレコーディングするのだ。
僕らは全員ガチガチ。
ドラムの川上が間違える度に大きな声で「すみませーーーーん」を
連発していたのを懐かしく覚えている。
無理も無いよね。初めてのレコーディングで一流のオーケストラと同時録音だもの。衣装もすごい。
バッハやモーツアルトでおなじみのフリフリシャツに七分パンツ、白いロングソックス。
17世紀あたりのヨーロッパ宮廷専属ミュージシャンの衣装だ。
明るい未来。前途洋々。アイドル路線マッシグラ。

そして、アダムスとしては初のウエスタンカーニバル。
「旧約聖書」のセールスはOUTCASTの倍に達していたし、
キャーキャーギャーギャーもこれまた倍増。
それどころか、僕の目が小さくてジミーーーーってことで渡辺美佐副社長(当時)は
ご自分のつけまつげを僕に!
おおいに盛り上げてくれた。(でもさ、ここだけの話内心これにはまいった。バンド全員笑っていたもん。)

だが、全てがうまく行っていたアダムスにも、やっぱり襲ってきた?!?
そう、ステージ上での恐怖。

それは2枚目のシングル「地球はせますぎる」(なんとオーバーなタイトル)を
引っさげてのウエスタンカーニバル。
出演するだけでカッコイイ!!!ウエスタンカーニバル。
親戚中に自慢できるのみならず友達や近所のおじさんにも誇れるウエスタンカーニバル。
今回の衣装は白いフリフリシャツに白のタイトなパンツ、黒と白のエナメルの長めのベスト。
そしてこれまたエナメルのブーツ。それもロンドンブーツ。
ロンドンブーツとはヒールが12cm以上は必ずある今でいうシークレットブーツのこと。
だれでも背は伸びるし足は長い。こぞって履いていた。皆で履けば怖くない!

でも怖い事は起きた。しかも、明るい未来。前途洋々。アイドル路線マッシグラ、のアダムス。
OUTCASTみたいに別に名前は不吉ではない。なのに、よりによって僕に起きちゃった・・・。

その時アダムスは、「地球はせますぎる」の他に、
ビートルズの「ルーシー・イン・ザ・スカイ・ウィズ・ダイヤモンド」を演奏した。
背筋も凍る恐怖はその時に起こった。
アイドル路線に軌道修正したアダムスはもちろんステージパフォーマンスに
動きを取り入れている。あたりまえだ。
あっちへこっちへ動く時も、軽いスキップをやらなくちゃいけない。スキップ???????!
そう。
僕がスキップしながら客席に向かって進み、間奏のソロを華麗に弾く。
ことにはなってはいた。華麗に。それはまぎれのない事実。
最前列までスキップをした僕。なんちゃってリーダー。
副社長はつけまつげまでしてくれた、僕を盛り上げる為に!

だが、その時かかとは弱かった。
僕の作り立てのエナメルブーツ。黒。
12cmのかかとは折れてコロコロコロコロ。
落ちた先は、なんと、黄色い声を張り上げているめっちゃ多感な女の子達の真ん中。
前にも書いたが、ウエスタンカーニバルはいろいろな人気グループが数多く出演している。
当然客席はアダムスのファンだけではない。
運良くアダムスのファンにかかとが落ちたのならキャーキャー言ってかかとは
取り合いになっていただろう。
しかし人生はそんなに甘くはなかった。

コロコロコロコロ転がって落ちた12cmのかかとは、間髪いれず乱暴に投げ返されてきた。
僕のおでこに当たらなかっただけでも感謝しなければならない。
しかもバンドの動き、そうスキップは続けなくてはならない。
12cmの差があるよね、右と左では。
当然僕の動きはギクシャクギクシャク。
それもかかとを手前に引き寄せながら。
またしても客席は笑いの渦。
確かに僕がお世話になった渡辺プロにはクレィジー・キャッツ、
ドリフターズ、最高のお笑いバンドが居た。
でも誰もがアダムスに笑いを取る事を期待をしてた訳ではない。
つけまつげの僕が、高低差12cmの左右の足でスキップをする姿は、
でもどう見てもお笑いだ。

でも全部がいとおしい思い出なんだよ。僕にとっては。
写真はアダムス。皆、ちょっとは可愛いでしょ?